ABC予想の証明検証が進展する!?
今回は、英語の科学ニュースサイト「Phys.org」で気になった、8月3日に掲載された「Progress finally being made on understanding ABC proof」という記事を見てみたい。
急にタイトルだけ紹介されても、何の記事だかわからないかもしれないが、「ABC proof」というのは、数学の「ABC conjecture(予想)」という問題に対する証明のこと。
もう、4年も前になるが、2012年9月14日にブログの「ハイレベルな日本の数学者」という文章の中で「日本の京都大学・望月新一教授が、500ページにも及ぶabc conjecture(abc予想)の証明を載せた論文をリリース」というニュースを書いたが、今回気になった英語の科学ニュース記事は、この証明に関する話題。
読んでみると、この証明に対する検証にまつわる話のようだ。というか、実のところ証明が公表されてから4年が経ったものの、検証があまり進んでなかった、という感じのことが書かれていた。
理由の一つは、証明が超難解、ということなのだと思うが、それ以上に
「he is a recluse, refusing to leave the safe confines of his place of work, Kyoto University」
ということがあるらしい。意訳になるが、要は「望月教授は京都大学の仕事場にこもって、外に出たがらない」という感じだろうか。
例えば、「昨年オックスフォード大学で、この証明について議論する数学者グループの会合があったが、それに望月教授は(当然のように)出席せず、ここでも結果的に検証は進展しなかった」という趣旨のことが記事に書かれている。
それが、今年の7月に京都大学で行われた会合に望月教授が参加したそうだ。記事には
「Mochizuki has been attending the conference, presenting his proof and answering questions.」
「He has also reportedly become more cooperative」
と書かれていた。「望月教授が証明の内容を口頭発表し、質問にも答えた」「(これまでより)協力的になるとされている」とされているので、証明の理解と検証がこれから進んでいくに違いない、ということなのだろう。
ということで、簡単だが、4年前というとずいぶん前になるがブログに書いた話題の続報記事があったので、紹介した。それにしても、「証明してから4年間ほとんど表に出ていなかった」とか「ついに望月教授が証明について語り始めた」ということだけでニュースになるくらい本当にすごいことをした、ということが伝わってくる記事だった。
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コメント
もう少しコメントしましょう。
フェルマーの定理の証明は、長い歴史の中で少しずつステップを踏んでいった結果なので、つなぎ合わせて証明しているように見えるかもしれませんが、証明をした人には見えている本質が何かあるはず、というのが数学だと思います。
また、こういう証明が出たらおしまいではなく、その本質を整理する人が現れて、、、と続いて行くのも数学です。多分、フェルマーの定理も将来綺麗に整理された証明を提示する人が現れると思いますよ。
投稿: 穴田浩一 | 2016年10月 2日 (日) 08時14分
(個人が特定されるかもしれない文章は削除しました)
これは、英語の科学ニュースサイトにあった内容を紹介した文章で、日本ではあまりネタにしてる人がいないのかもしれませんね。
それにしても、かなり詳しく調べてますね。数学の専門家ばかりでなく、幅広い人たちに興味を持たれていることがよくわかりました。
コメントありがとうございます。
投稿: 穴田浩一 | 2016年10月 2日 (日) 06時59分
ABC予想の証明がなぜ停滞しているのかという理由に関して、その証明が望月教授の専門分野であり、かつ望月教授しか宇宙際タイヒミューラー理論を理解出来ないからである、と私は理解しています。
ポアンカレ予想においても数学だけではなく他分野に渡る知識を駆使して証明をしたため、その証明を理解できる数学者がいないということがありました。
一方で、フェルマーの最終定理のように何人かの人間が研究した理論を繋ぎ合わせ証明した理論もあります。しかし、それは私の感覚から言えばツギハギのようであまり美しくないように思います。もしABC予想が証明された場合、フェルマーの最終定理がABC予想に内包されてしまうというのは皮肉なものですが。
これらから考えうることは、これからの時代において、数学の未解決問題はあらゆる学問分野が横断的に溶け合いながら得られた知見により証明されうるのではないかということです。
それは数学の証明だけでなく、文系の学問やマーケティングや企画などのビジネスシーンにおいても共通の視点だと思います。
できるだけ幅広くアンテナをはりながら情報を取り入れ自分の中で溶け合わせたいと考えています。
投稿: Fのマラソン走者 | 2016年10月 2日 (日) 03時46分