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2016年8月23日 (火)

RSA暗号が世界に与えた影響

 ニューヨークタイムズの数学」の本の中からネタを探して一ヶ月ほど経つが、これまで取り上げていない話題の中で今回は暗号に関連するの記事を見てみたい。

 暗号の中でも、特に「RSA暗号」の話は、数学と切っても切れない関係ということもあって関連する記事がたくさんある。例えば、1994年12月13日掲載の「[科学者の仕事場]レオナルド・エーデルマン -- コンピュータ理論の核心を突く(P.640)」は、RSAのうち「A」の人「レオナルド・エーデルマン」の人柄や業績などを紹介した記事。

 この記事の最初の方に「エーデルマン博士がその名を一番よく知られているのは、恐らく彼が渋々と関わっていたプロジェクトによってでしょう」と書かれていた。これがRSA暗号開発の話のことを指しているのだが、実際にやったことは、リベスト博士(R)とシャミール博士(S)が考えた暗号システムの解読を試みること、だったらしい。

 本には「(RとSの2人が考案したシステムは)42にも達しますが、エーデルマン博士はその全ての暗号を解読してしまいました」と書かれていた。そして、43番目に考案したのが今の「RSA暗号」の原型のシステムだったそうだ。

 で、記事を読むと、この成果を論文として発表した後「3人の研究者とその暗号はすぐに有名になりました。」と書かれていた。「お金持ちになるよ、とみんなにいわれました」という個人的な話や「RSAのような一見解読不可能に思える暗号の発表は国家の安全保障を危うくすると不満を漏らしました」という国家安全保障局の話など、いろいろなことがあったようだ。

 中でも、国家の安全保障に関わる話は新聞読者の興味を引くネタだったからなのか、この本では第5章に「暗号学と、絶対に破られない暗号の出現」と題して、たくさんの記事が載っている。どんなところが興味を引くのか、という点は、この章の最初の記事「暗号研究にいやがらせを受けたと主張(P.440)」の最初を読めばなんとなくわかる。

 この記事は「暗号に関する研究をしているコンピュータ・サイエンティストや数学者は、自分たちに対する国家安全保障局のいやがらせが強まっていて、研究論文を発表したら制裁や刑事告発さえありうると脅されていると言っています」という文章から始まっている。

 今現在のコンピュータネットワークが世間一般に広まった中でのRSA暗号の使われ方を考えると、「なんで暗号の研究をして脅されるの?」と思ってしまうかもしれないが、この記事が掲載された1977年当時はこういう時代だったのだろう。

 もう少し詳しく、RSA暗号が世界に与えた影響については、1981年6月1日掲載の「暗号学の進歩に対し保安規定を厳格化(P.447)」という記事で読むことができるだろうか。

 この記事では「コンピュータのおかげで暗号は解読が困難なほど強力になってしまったため、諸大国が「互いに相手の手紙を読む」ことができた時代は終わりに近づいている、と一部の専門家は考えています」と説明している。

 具体的には、例えば「第二次世界大戦で日本海軍が負けた大きな原因は、転機となったミッドウェー海戦の前に、アメリカの暗号解読者らが暗号を解いて、日本側の意図を読みとっていたことでした」という話があるが、要するに、それまでの暗号は諸大国が秘密裏に作成してはいたが頑張れば解読可能なレベルだった、ということなのだろう。

 それが、そんな諸大国の秘密裏の研究レベルをはるかに上回る、実質的に誰にも解読できないと保証できてしまう「暗号システム」のアイディアを普通の研究者が論文として公の場に出してしまったのだから、と考えると、国家権力の立場にいる人の驚きというか焦りは想像できる。

 このあたりの話は、他にも、

「研究者ら公表前チェックに同意へ(1980年11月1日・P.444)」
「アメリカ政府の一時差し止めに怒り(1987年2月17日・P.458)」

などの記事を見ても面白いと思うが、この文章も長くなってきたので今回はここまでにしておこう。

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コメント

RSA暗号いいですよね

投稿: | 2016年9月 9日 (金) 09時24分

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