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2016年8月

2016年8月28日 (日)

本「ニューヨークタイムズの数学」の感想

 7月中旬から、同じ本からネタを探してブログを書いていたが、あれこれいろいろあって、あっという間に8月も終わりになってしまった。結構いろいろ書いたとは思うが、それでも「ニューヨークタイムズの数学」で掲載されている記事の中で比較的古いものばかり見ていた気がする。

 最近の話題もまだまだたくさんあって、書き出すとキリがないくらいかもしれないが、とりあえずこの本からネタを探すのは夏の間、と決めていたので、この辺りで一区切りをつけておくことにしたい。

 ということで、今回は本全体の感想的なことを書いておこうと思う。ニューヨークタイムズや関連誌に掲載された数学の話題が 110 本あって、一ヶ月以上の間ずっと飽きずに本を見ることができた。

 ずっと思っていたことは、章立てしてある程度まとめてあるとは言っても、書いた人・時期・テーマがそれぞれ異なる記事を整理するのは大変だっただろう、という点だ。

 実際、これを「一つの本」だと思って最初から読み始めてみると、すぐに「なんだかまとまりがない感じだな」と思ってしまうかもしれない。だから、この本は新聞を読む感覚で自分なりに知りたいことや興味のあることに関連する話題を拾おうと思ってパラパラめくってみるといいと思う。

 ただ、例えば「50年以上前に書かれた古い記事」とか「あるキーワードに関連する記事」など、という形で記事を探そうと思ってしまうと、なかなか見つけにくかったするのが難点といえば難点だ。

 まあ、全部で124年間の新聞から記事を110だけピックアップするだけでも大変な作業だし、それを1冊の本としてまとめてくれる人がいたから私もたくさんの古い記事に触れることができた訳だから、贅沢は言えない。

 そんな風に思いながら、あれこれ気になったことを探していく作業自体に、いつの間にかハマってしまった感がある。

 内容に関する感想としては、何度か触れていたと思うが、全体的に「研究者・技術者の視点」で書かれている点が印象深い。どのように取材しているのかわからないが、素人にはよくわからない感じのプロの「視点」も含めて、研究者・技術者の視点をできるだけ忠実に伝えようとしている感じが新聞の読者に受けているのかもしれない。

 また、この本のイントロダクションを読むと、例えば「現代科学の多くの分野は、研究者らの巨大なチームなしには成り立ちませんが、数学者はたいてい一人で研究します。」「一人の明晰な人物が一つの分野を変えることができるのです。」「そして、こうした数学者らの多くは、忘れられないような逸話や、洞察力を持っています。」と書かれていたりして、記者たち自身がこうした数学に関わる個々の研究者や技術者の視点を伝えたいと純粋に思っていた、という気持ちも伝わってくる。

 こういう言い方はあまりよくないかもしれないが、別に数学の「研究者・技術者の視点」を伝える記事をたくさん書いたからといって何か得がある訳でもない気がするし、(数学のネタに限ったことではないが)こうした「純粋に伝えたい」という雰囲気の文章を読むと何となく清々しい気分になるのは私だけだろうか。

 ということで、ずいぶん長く一ヶ月以上も同じ本からのネタで文章を書いたが、8月の終わりでキリもいいので、ひとまずこのあたりで一区切りをつけようと思う。9月からは、またいつもの感じに戻していこう。

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2016年8月23日 (火)

RSA暗号が世界に与えた影響

 ニューヨークタイムズの数学」の本の中からネタを探して一ヶ月ほど経つが、これまで取り上げていない話題の中で今回は暗号に関連するの記事を見てみたい。

 暗号の中でも、特に「RSA暗号」の話は、数学と切っても切れない関係ということもあって関連する記事がたくさんある。例えば、1994年12月13日掲載の「[科学者の仕事場]レオナルド・エーデルマン -- コンピュータ理論の核心を突く(P.640)」は、RSAのうち「A」の人「レオナルド・エーデルマン」の人柄や業績などを紹介した記事。

 この記事の最初の方に「エーデルマン博士がその名を一番よく知られているのは、恐らく彼が渋々と関わっていたプロジェクトによってでしょう」と書かれていた。これがRSA暗号開発の話のことを指しているのだが、実際にやったことは、リベスト博士(R)とシャミール博士(S)が考えた暗号システムの解読を試みること、だったらしい。

 本には「(RとSの2人が考案したシステムは)42にも達しますが、エーデルマン博士はその全ての暗号を解読してしまいました」と書かれていた。そして、43番目に考案したのが今の「RSA暗号」の原型のシステムだったそうだ。

 で、記事を読むと、この成果を論文として発表した後「3人の研究者とその暗号はすぐに有名になりました。」と書かれていた。「お金持ちになるよ、とみんなにいわれました」という個人的な話や「RSAのような一見解読不可能に思える暗号の発表は国家の安全保障を危うくすると不満を漏らしました」という国家安全保障局の話など、いろいろなことがあったようだ。

 中でも、国家の安全保障に関わる話は新聞読者の興味を引くネタだったからなのか、この本では第5章に「暗号学と、絶対に破られない暗号の出現」と題して、たくさんの記事が載っている。どんなところが興味を引くのか、という点は、この章の最初の記事「暗号研究にいやがらせを受けたと主張(P.440)」の最初を読めばなんとなくわかる。

 この記事は「暗号に関する研究をしているコンピュータ・サイエンティストや数学者は、自分たちに対する国家安全保障局のいやがらせが強まっていて、研究論文を発表したら制裁や刑事告発さえありうると脅されていると言っています」という文章から始まっている。

 今現在のコンピュータネットワークが世間一般に広まった中でのRSA暗号の使われ方を考えると、「なんで暗号の研究をして脅されるの?」と思ってしまうかもしれないが、この記事が掲載された1977年当時はこういう時代だったのだろう。

 もう少し詳しく、RSA暗号が世界に与えた影響については、1981年6月1日掲載の「暗号学の進歩に対し保安規定を厳格化(P.447)」という記事で読むことができるだろうか。

 この記事では「コンピュータのおかげで暗号は解読が困難なほど強力になってしまったため、諸大国が「互いに相手の手紙を読む」ことができた時代は終わりに近づいている、と一部の専門家は考えています」と説明している。

 具体的には、例えば「第二次世界大戦で日本海軍が負けた大きな原因は、転機となったミッドウェー海戦の前に、アメリカの暗号解読者らが暗号を解いて、日本側の意図を読みとっていたことでした」という話があるが、要するに、それまでの暗号は諸大国が秘密裏に作成してはいたが頑張れば解読可能なレベルだった、ということなのだろう。

 それが、そんな諸大国の秘密裏の研究レベルをはるかに上回る、実質的に誰にも解読できないと保証できてしまう「暗号システム」のアイディアを普通の研究者が論文として公の場に出してしまったのだから、と考えると、国家権力の立場にいる人の驚きというか焦りは想像できる。

 このあたりの話は、他にも、

「研究者ら公表前チェックに同意へ(1980年11月1日・P.444)」
「アメリカ政府の一時差し止めに怒り(1987年2月17日・P.458)」

などの記事を見ても面白いと思うが、この文章も長くなってきたので今回はここまでにしておこう。

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2016年8月18日 (木)

数学とコンピュータの関わり

 前回、ニューヨークタイムズの数学」の本の中から、初期のコンピュータの発展に関する話題を書いたが、もう少し数学とコンピュータの関わりを取り上げた記事を見てみたい。

 そう思って本をパラパラめくってみると、前回も紹介した2番目に古い記事「考える機械」が高度な数学に挑む -- 人間なら数ヶ月かかる方程式を解く(P.511)」や1946年1月11日掲載の「電子工学が気象についての計算の手助けをする(P.101)」などの古い記事を含め、「コンピュータが(伝統的な)数学に変化を与えている」という話が多いことに気がつく。

 一方で「数学はコンピュータの発展に多いに貢献している」という趣旨の記事は少ない。まあ、数学が世の中に貢献している、という話は世間一般の受けがあまりよくないのだろうか。それに「最新のコンピュータが保守的な手法や思想(この場合は伝統的な数学手法)に変化をもたらしている」という感じにした方が読者の興味を引くのかもしれない。

 そんな中で、1967年1月9日掲載の「デジタルコンピューター -- どのように誕生したか、どのように動き、何ができるのか(P.519)」という記事は、かなり長いから普通の記事じゃなくて何かの特集記事だと思うが、数少ない「数学はコンピュータの発展に多いに貢献している」ということ書かれている記事で、例えば「計算機科学(コンピュータ・サイエンス)に多大な影響をもたらした技術の発展には、多くの人が重要な役割を果たしていました(P.519)」と前置きした上で、ブールウィーナーチューリングノイマンシャノン、といった著名な数学者とその業績を紹介している。

 さらに遡って、「計算する機械・計算装置」を過去に構築した、ネイピアパスカルライプニッツといった、歴史上の著名な数学者の名前も出てきたりもする。

 他にも、例えば製品の在庫管理をコンピュータで行わせる例では「重要な疑問は数学の方程式によって明確に表されます」と前置きして方程式を明記した上で実際のコンピュータで行う計算を説明、といったように、数学とコンピュータの関わりがわかりやすく解説されている。

 ところで、数学とコンピュータの関わりの歴史を考えると、4色問題の解決の話は外せない。やはり、4色問題を証明するためにコンピュータの力を借りた、という話題はかなりセンセーショナルな話のようで、解決した1976年の記事だけでなく、後の記事にもたびたび現れる。

 例えば1991年7月14日掲載の「コンピュータはまだ美しい数学ができないのか(P.51)」は、タイトルから見てもわかる感じだが、数学の定理を証明するためにコンピュータを利用することに関する意見などが書かれた記事。

 この中で「コンピュータを利用した証明という厄介な問題は、ここ14年間数学界を悩ませてきました。その発端となったのは、4色問題という有名な予想が解かれたことです。」と紹介されている。さらに、この件に関する伝統的な数学者の意見として「この証明を受け入れがたいと感じました」とも書かれていた。

 他にも、現実的な問題として捉える数学者の話として「自分たち(数学者の集団)の機関誌が(このような証明を)検討する前に、独立したコンピュータ関係の組織によって十分に正しさが検討されるべきだ」とする意見も書かれている。

 フェルマーの最終定理の話題のところでもそうだったが、難しい問題であればあるほど正しそうな証明が提示されたとしても、細かい部分でのミスはよくあることだし、やはり数学の問題解決というのは、単に「証明をする」だけでなく、「証明が正しいか検証する」という過程が重要だ。

 確かに、証明の過程でコンピュータを使ってしまうと人間が「証明を検証する」ことが困難になることが予想される。この記事は最後に「1人の人間が部屋で腰をすえて、1行ずつ読んで理解できるような証明が出てくるまでは、多くの数学者たちは本当に問題が解かれたとは考えないでしょう。」という文章で締めくくっているが、「正しさの検証」というのは多くの人を悩ませる問題のようだ。

 他にもあちこちにコンピュータと数学の関わりに関する話題はあるが、とりあえず文章も長くなってきたので今回はこの辺で終わりにしておくことにしよう。

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2016年8月13日 (土)

初期のコンピュータ開発に貢献した人々

 前回はブログ報告で一息ついたが、後もう少し夏休みモードで「ニューヨークタイムズの数学」の本の中からネタを探してみたい。

 数学が本当に役に立っていて、かつ世間一般の目から見ても大いに興味を持たれる分野のひとつはコンピュータの世界だろう。この本は「数学」を主題とした記事がメイン、ということもあり割合的にはそれほど多くないかもしれないが、それでも第6章の「数学の世界に登場したコンピュータ」のところの他、いろいろな記事にコンピュータの話題がある。

 ここで、コンピュータの話題というと、日本だとなんとなくパソコンの話題かと思う人もいるかもしれないが、この本の中にあるのはパーソナルじゃないコンピュータがメインだ。実際、技術的なことがわからない世間一般の目から見ると「???」と思うような内容が結構あったりする。

 こういった内容の場合、日本の新聞だと、なんとなく世間一般の目にもわかりやすく、あるいは、最近だと企業の製品・商品の開発の話を交えて、といった記事が多い印象を受けるが、この本に載っているニューヨークタイムズの記事はそんなことはなく、基本的に「研究者・技術者の目」が中心な感じがする。

 あと、日本の新聞などと違う印象を受ける話としては、特に初期のコンピュータ開発と国家(特に軍事)との関わりにまつわる部分だろうか。1946年に公開された世界初の電子計算機(現在のいわゆるコンピュータ)と言われているENIACについてWikipediaで調べてみると「ENIACはアメリカ陸軍の弾道研究室での砲撃射表の計算向けに設計された」と書かれていたりするし、アメリカの人から見れば「元々、コンピュータ開発は国家(軍事)が中心」というのが常識なのかもしれない。

 例えば、この本の中で2番目に古い1927年10月21日掲載の「「考える機械」が高度な数学に挑む -- 人間なら数ヶ月かかる方程式を解く(P.511)」は、ある大学教授(博士)が「考える機械」を開発した、ということが普通に書かれている記事なのだが、開発した博士については、わざわざ「第一次大戦の間は海軍のための潜水艦の検出装置の専門家として活躍」と紹介していたりする。

 他にも、初期のコンピュータの発展に大いに貢献した人の訃報を伝える「准将グレース・M・ホッパー: コンピュータに革新をもたらし85歳でこの世を去る(P.565)」「フランシス・E・ホルバートン 84歳: 初期のコンピュータプログラマ(P.569)」の2つの記事で紹介されている方々は、一人は軍人、もう一人も陸軍や海軍の研究所で長く働いてた人だ。

 ちなみに、この訃報の記事については別の見方もできる。というのは、この2人はともに女性で、実はアメリカでは初期のコンピュータ開発に女性が多いに活躍したそうだ。例えば、Wikipedia英語版のENIACには「ENIAC Girls」という項目があって、世界最初の電子計算機ENIACに関わった女性の方々にまつわる話が載っている。

 また、Wikipediaにあった写真(パブリックドメイン)で、ENIACを操作している人は女性だ。

Two_women_operating_eniac

 ということで、今回は「ニューヨークタイムズの数学」の本から、コンピュータに関する話題、特に古いものを少し取り上げてみた。

 世間一般の目や企業中心といった日本の記事と違って、「研究者・技術者の目」が中心の記事が多かったこともあって、初期のコンピュータ開発に貢献した人々がどんな人たちで何をしたのか、ということがわかりやすかった。

 ただ、今回は数学の話はなかったこともあるので、次回は、もう少し最近のコンピュータと数学に関する記事も紹介してみたいと思う。

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2016年8月 8日 (月)

ブログ報告(2016年7月)

 先月から、ずっと同じ本の中からネタを探して書いていたからか、ブログ報告をするのをうっかり忘れてしまった。まだまだ本からのネタもあるが、とりあえず今回は休憩して7月のブログ報告にしようと思う。

 まずは、アクセス数から。

Blogaccess1607

PV 769 日平均: 約23
UU 469 日平均: 約14

 先月よりアクセス数(PV)が少し増えた。訪問者数(UU)の方はちょっと減ってるようなので、今月は複数のページにアクセスして下さった方が増えたのだと思う。また、これまでと同様、今月も毎日アクセスがあった。(アクセスしてくださった皆様、ありがとうございます。)

 次はデバイス別の割合。

Blogdevice1607

PC: 40.57%(6月:40.32%)
iOS: 33.55%(6月:37.82%)
Android: 24.19%(6月:20.84%)
ケータイ: 1.56%(6月:0.50%)
その他: 0.13%(6月:0.50%)

 先月と同様、PCが4割、という形で落ち着いてきたようだ。次は、ページ別のアクセスランキング。

Blogrank1607

 なんと、今月はいつもの変形折り鶴や進級進学の意味のページを抑えて「琵琶湖のハスが消えた?」のページのアクセスがトップページに続く2番目にランクインしていた。

 これは、7月4日に載せた文章で、毎年夏になるとハスが覆い尽くすほどになるはずなのに、今年は全くハスが見られない、というニュースを取り上げたもの。

 結構関心を持たれる話題だったのか、「83」もアクセスがあったので、8月になってどうなったのか調べてみたら、やっぱりハスは全くないようだ。さらに、この現象は琵琶湖にとどまらず、日本の各地で見られるらしい。

 例えば、7月25日に掲載された、NHKニュースのWEB特集のページに「ハスに異変 いったい何が」には、滋賀県の琵琶湖の他、岐阜県の「アクアワールド水郷パークセンター」でもハスが全くない現象が見られた、と報道されていた。

 そちらの方も原因は今のところ不明なようで、何かの予兆なのか、本当に心配だ。今後何かわかった時にはまたブログで取り上げてみたい。

 ということで、今回は7月のブログ報告にした。まあ、次回以降も夏休みモードで、前回と同じように本からネタを探すパターンをしばらく続けていこう。

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2016年8月 3日 (水)

数学に対する世間一般の目

 「ニューヨークタイムズの数学」の第3章は「広く知られた問題の数々」というタイトルで、前回とりあえたフェルマーの最終定理やポアンカレ予想以外にも幾つかの問題に関する記事がある。ということで、今回はその中からいくつか紹介したい。

 有名でわかりやすところだと「4色問題」では、結構古い記事で1939年4月21日掲載の「解決に向かう4色問題(P.210)」。内容は4色問題の解決の話ではないが、「解決するための間接的な方法を提供する一般化」が提示された、というニュースだ。

 そして、4色問題解決のニュースは、この記事から37年も後になる。1976年9月24日掲載の「4色予想の証明(P.211)」がその記事。

 ただ、内容的には、「4色予想が証明されたからといって、実世界の役には立ちそうもありません。にもかかわらず、大いなる知的偉業が成し遂げられたことに変わりはないのです」という感じのことが書かれていたりして、よく知られた難問が解決した、というニュースの割に、かなりアッサリとした報道のされ方なのが少々残念な気はする。

 というか、数学の世界にいる人から見ると「問題が解決」というのは大きなニュースだと思うかもしれないが、世間一般の目ではそうでもないようだ。例えば、1986年8月12日掲載の「でも、真理と美があれば十分じゃないですか?(P.29)」という記事では、数学の世界にいる人と世間一般の目の差を表す話から始まっている。

 この記事の最初の部分をかいつまんで説明すると、当時のフィールズ賞受賞者に対する取材を行っている記者が、

「数学の分野で最高に名誉ある賞を獲得したみなさん、自分の業績がどんなことに役立つのかを、聴衆に語ってはくれませんか?」
「テレビの前の視聴者にとって、これらの業績はどんなふうに生活を向上させてくれるものなんですか?」

という問いかけを行ったところ、受賞者の一人は怪訝そうに

「(この問いかけに対して)話をすることをきっぱり拒否しました」

と書かれていた。受賞した数学者は難問が解けたこと自体をニュースにして欲しかったようだが、実際に取材した記者は、難問を解けた受賞者の喜びの声よりも、世間一般の目から見て興味を持てるようなコメントを得ることを優先させたのかもしれない。

 まあ、前回のような「350年間誰も解決できなかった超難問」の話とか、「超難問が解けたのに受賞や賞金を拒絶した」という話なら誰でもビックニュースだと認識できるだろうが、難しい問題とはいえ単に「難問を解いた」というだけでは世間一般の人たちの興味を引かない、ということなのだろう。

 一方で、他の「超難問」に関する記事を見ると、例えば、1988年4月17日掲載の「ゴールドバッハの予想: 証明される日が来るかもしれないが、それは誰にもわからない(P.213)」やリーマン予想に関する2002年7月2日掲載記事「いまだに数学者を駆り立てる143年来の問題(P.288)」のように「未解決」という点が話題になっていたりする。

 この種の記事では、未解決という部分から一種のミステリー的な興味が湧くからなのか、「役に立つのか」などといった問いかけは一切なく、純粋に「未解決」という部分がクローズアップされている。新聞の記事になる数学のネタというのはこんなものなのかもしれない。

 あと、私自身が興味を持ったところだと「これまで予想されていたことが間違っていた」という話。ただ、本の中からこの手の話を探そうとしてみたが、目次のタイトルを見てもそれらしいものは見つからなかった。

 そんな中で、記事の中身を読んでいて見つけたのが、前回取り上げたフェルマーの最終定理に関する記事にさりげなく書かれていた、オイラーの予想が間違っていた、という話(P.222)。

 具体的には、「オイラーは18世紀に a4+b4+c4=d4は非自明な整数解を持たないと提起しました」と書かれている部分。これは、フェルマーの最終定理によると「a4+b4=d4をみたす整数の組 (a,b,d) は存在しない」ということは正しいようだから、左辺を3つの和にしても正しいに違いない、という予想だと思っていいだろう。

 で、左辺が2つの和の時は、前回紹介した通りフェルマーの最終定理が正しいことが証明されたが、それを3つにしたオイラーの予想について、記事には「しかし、(記事が掲載された1988年から見て)つい昨年の夏、ハーバード大学の数学者ノーム・エルキースは、それが誤りであることを証明しました」と説明されている。

 実際には、コンピュータを使って、

958004+2175194+4145604=4224814

という反例を見つけた、という話だ。個人的には、この部分自体が結構面白そうな数学の話題だと思うが、記事では「フェルマーの最終定理は見た目の単純さと裏腹に、本当に正しいかどうかは直感的にはわからない」ということを説明するための小ネタの扱いにとどまっている。

 あれこれ探すと、いろいろ細かい話もあるかもしれないが、文章が長くなってきたので今回はひとまずここまでにしておこう。また探している時に気になるネタを見つけたらブログに紹介していこうと思う。

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