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2015年8月14日 (金)

(再掲載その21)(本の紹介)その数学が戦略を決める

********2013年2月1日掲載********

 前回、ブログで「統計的な解析による指標」の中で、「その数学が戦略を決める」という本を紹介した。実のところ、私がこの本を読んだのは5年くらい前なのだが、最近文庫版が出たようだ。文庫版が出るということは結構売れている本なのだろうと思うので、今回は簡単にこの本の紹介でもしてみることにした。

 タイトルには「数学」となっているが、中身の方は前回書いたように「統計」にまつわる話がメインである。まあ、「統計」は「数学」の一部だと言えばそうだとは思うが、数学全体に関する話ではない、ということである。

 数学全体にまつわる話の本では、例えば夏頃にブログで紹介したの本(「数学は最善世界の夢を見るか」「不可能、不確定、不完全」)などがあると思うが、これら少々難解な部分があるのは否めないかもしれない。

 一方、今回紹介する本は、統計にまつわることを、様々な話を交えながらわかりやすく話しているうえに、各章の最後に丁寧に「まとめ・ポイント」が2ページ程度に書かれている。このようなものなら、高校生くらいなら普通に読める内容だろうし、中学生でも意欲がある人なら大丈夫だと思う。

 内容は、前半は前回紹介したワインの質の話など、統計的な解析による指標を認めたがらない専門家の反応を交えながら、如何に統計的な解析が優れているか(あるいは専門家が信用できないか)という話を展開している。

 例えば、第4章には医療現場での話が書かれているが、その最初の方に約170年ほど前のゼンメルワイスという人の話が載っている。この本によると、この人は勤めていたウィーンの産院で産褥熱(さんじょくねつ)に関する詳細な統計調査を1840年ごろに完成させている、とある。

 具体的には、調査の結果、「診療所の医師や看護師が患者を診る前に塩素入り石灰水で手を洗えば産褥熱による死亡率が12%から2%に下がる」ということを発見したそうだ。要するに手を消毒してから患者を診察すれば(今で言う)院内感染は防げる、という当たり前とも思えるような結論だが、170年前の医師たちからは猛反発をくらった、と本には書かれている。

 何故反発されたかについては、この本にはそれほど書かれていないが、興味がある人は例えばwikipediaなどに詳しく載っているようなので、そちらを見るといい。この本には、(当時としては)驚異的な発見をしたにもかかわらず主張が受け入れられなかったこの人は、後に神経衰弱になり失意のうちに亡くなった、ということが書かれている。

 「消毒のために手を洗う」ということは今では常識だと思うので、当時の人たちが統計調査の結果を受け入れなかったことに憤慨する人が多いかもしれないが、現在でも似たように(100年以上たったら常識になっているかもしれないことを)単に「数学や統計がよくわからないから」とか「専門家でない人に何がわかる?」などと言いながら取り合わないことも結構多いような気もする。

 こういった本を読むと、どんなことでも何らかの根拠に基づいて得られた結果は(たとえ自分自身が理解できなかったとしても)尊重していく姿勢が如何に重要か、ということを思い知らされる。

 このような話に続いて、本の後半(第6章以降)では、統計的な解析の手法にまつわる話がわかりやすく書かれている。専門書ではないので、この本を読んだだけでは統計的手法の勉強にはならないかもしれないが、何となく「統計をもう少し真剣に勉強してもいいかな」と思わせるように文章が書かれているような気がするのがいい。文庫本は低価格で購入できるし、もしかしたらそのうち古本屋にも出まわるかもしれないので、もし見かけたら、たまにはこういった本を読んでみるのもいいのではないかと思う。

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