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2015年8月19日 (水)

(再掲載その22)本の紹介「不可能へのあこがれ」

********2014年3月8日掲載********

 私としては、いろいろと仕事が忙しい時期になってきているのだが、その一方で学生達は試験も終わって春休み、という時期だと思う。

 そんな時期に、専門書とまではいかなくとも中身が濃い数学の本を読むのも悪くないかな、とことも考えて、今回はそんな本を一つ紹介してみようと思う。

 最近、翻訳された「不可能へのあこがれ ―数学の驚くべき真実―」とう本。

 紹介する前に書いてしまうと、実はこの本、以前私もお手伝いした「数学公式ハンドブックポケット版)」を翻訳した柳谷晃先生と内田雅克先生が訳した数学の話の本である。

 内容は、序文の最初に書かれている「不可能を受け入れる」という言葉の通り、数学の発展の歴史の中で「不可能」と言われているものを如何にして数学に取り込んできたか、という話がメインになっている。

 わかりやすい例で言えば、例えば「無理数」のような自然数の比(分数)で表せない数を「(正の)数=数直線の長さ」と認識する、なんていうのが挙げられるだろうか。ただ、この本はそんな程度の話では終わらない。

 そんなこともあって、数学を本格的に勉強したことがない人にとっては少々難しく感じるかもしれないが、専門書ではないので、本格的な数学の話をちょっと覗いてたいと思っている人には比較的読みやすく、いい感じだと思う。

 例えば最初の章「無理数」は、「音律」の話から「自然数の比」「無限小数」「無限に続く計算(アルゴリズム)」「連分数」「方程式を解く」と続いて、章の終わりに改めて「音律」の中に現れる無理数の話、という流れになっていて、最初の章を読むと(無理数の代表例として)「√2という数」をどのように理解するか、という数学の話に触れることができる。

 中学や高校の数学だと「実数=数直線上の点」という捉え方から、無理数を含む正の数を「線分の長さ」という幾何的なものとして考えることが多いかもしれないが、さらに進んで数学の内容を知ろうと思ったら、「数」を(加えて「直線」も)「計算」を通して理解することが必要になってくると思う。

 本の話に戻ると、この無理数の話に続いて、方程式を解く話から「負の数」「虚数」、その後に「遠近法・水平線」の話から「射影幾何学」という言葉と、「幾何学と代数学の融合」という雰囲気の話が続く。

 さらに「無限小」「曲がった宇宙」「4次元」などなどの「不可能(と思われるもの)を受け入れる」という話が続くが、実はそれらの全ては表紙の絵にもなっている「ペンローズの三角形」という、実現不可能と言われている図形を数学として受け入れるために必要な事柄になっている、という構成が面白い。

 古代の時代にピタゴラス学派が存在を認めなかった「無理数」や、現実にはない数と言われている「虚数」の話自体も「不可能を受け入れる」という話だし、そんな比較的理解しやすい話から始まって、長い道のりを経て最終的に「不可能な図形」として知られる「ペンローズの三角形」へたどり着くという話の流れが、邦題タイトル「不可能へのあこがれ」の雰囲気を出している気がする。

 ということで、今回は春休み読むのにどうだろうか、思う本を一つ紹介した。全体を通して理解するのは難しいかもしれないが、個々に書かれている内容自体は、中学数学+高校数学が少々、という知識で読むことはできるだろう。

 値段が少々高く、ちょっとした小遣いで買う感じの本ではないのだが、それだけの内容はあると思う。文庫や新書本などにある数学っぽいことが書かれた本に飽きたら、こういった本も手に取って損はない気がする。

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