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2014年2月24日 (月)

日本の古典と数学

 私は理系人間なので文学には疎いのだが、この前、源氏物語の話に触れる機会があった。正直なところ、詳しい物語の中身はあまりわかっていない。

 ただ、いろいろな話題の中で、理系人間の私でも興味が持てそうなものがあった。「源氏香」という、お香の香りを聞き分ける昔からある遊びというかゲームのようなものだ。

 簡単に書くと、5本のお香を聞き分けて香りの同異関係を当てる、ということのようだ。ちなみに、「お香を聞く」というのは、「香りを嗅ぐ」という意味である。

 よくよく見てみると、この「源氏香」というのは、源氏物語の中身と直接関係はないらしい。ただ、「5本の香りの同異関係」の全パターン数「52通り」が、源氏物語の全帖数「54」に近いことから、それぞれのパターンを源氏物語それぞれの巻のタイトルの名前がつけられたそうだ。

 例えば、5本のうち「2本目・4本目」と「3本目・5本目」がそれぞれ同じで「1本目」は他とは違う香りの時は、「源氏香」では23番目のパターンになっているため、そのパターンは源氏物語の23番目の話「初音」と言う。

 また、同異関係のそれぞれのパターンに対応する「源氏香の図」というのがあって、「初音」の図は次のようになる。

Hatune

 ちなみに、源氏物語の「23 初音」は、インターネットの青空文庫に「初音・与謝野晶子現代語訳」が掲載されていて、誰でも自由に読むことができる。

 で、何でこの「源氏香」に興味を持ったかというと、これが「パターン(場合の数)の数え上げ」という数学の話に関係しているから、という理由だ。まあ、物語とは何の関係もないのだが、ちょっとインターネットで調べてみても、Wikipediaの「ベル数」の項目には源氏香の図の全パターンが載っていたりする。

 そこで、もう少し数学の本などをパラパラめくってみると、例えば「数え上げ組合せ論入門」とか、「Art of Computer Programming, Volume 4, Fascicle 4」という洋書(日本語訳もある)のような数学の専門書にも載っていた。

 洋書の「Art of Computer Programming, Volume 4, Fascicle 4」には、数学の歴史が簡単に書かれていて、その中の「Set Partition(分割・グループ化パターンの数え上げ)」の項目の最初に

The partitions of a set seem to have been studied first in Japan, where a parlor game called "genji-ko"("Genji incense") ...

と書かれていた。直訳すると「幾つかのものの分割については、日本で最初に研究されたらしい。そこでは"源氏香"という室内ゲームが(古くから)行われていて、、、」となるだろうか。

 この本には、その後に「源氏香の図」が載っていて、18世紀(1700年代)の江戸時代に関孝和とその門下生達がパターンの数え上げについて研究を行っていた、という話が書かれている。

 欧米で研究されるようになったのは19世紀(1800年代)になってからで、それを20世紀になって定式化した人の名前をとって「ベル数」と呼ばれているそうだ。

 そういう話が江戸時代の日本で独自に研究されていて、さらにそれを「源氏物語」に結びつける辺り、当時の日本の数学のレベルの高さと洒落た感覚が垣間見れるのが、なかなかいい感じだ。

 ということで、今回は「源氏香」の話について少し調べてみた。これまで日本の古典の話はあまり見ていなかったが、こういったことがあると、いろいろ調べてみたくなる。

 また、機会があったら、いろいろと日本のことも調べてみるのもいいかもしれない。

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