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2013年4月 6日 (土)

科学技術分野の論文数

 前回の「極地の氷の研究成果」では、日本の気象と北極の海氷との関係についての日本の研究成果を紹介したが、今回も研究に関する話になる。

 1週間ほど前になるが、朝日新聞に「研究論文数日本2→5位 研究国際化に遅れ」と題する記事が載っていた。それによると、日本は科学技術分野での論文数に伸び悩み、国際的な共同研究の流れに乗り遅れている、ということらしい。

 具体的には、全世界の科学技術分野の論文の中の日本のシェアは、10年前はアメリカに次ぐ第2位だったのに対し、現在はアメリカ、中国、ドイツ、イギリスに次いで第5位になった、ということである。

 これには、前にブログで「科学研究に対する考え方」に書いたような科学技術分野の研究そのものに対する考え方の違いもひょっとしたら影響しているかもしれない。ただ、数字の上で伸び悩みが顕著に現れているのは事実のようだ。

 しかしながら、こうやって他の国と比較しながら分析する場合、もう少し冷静にデータを見る必要がある気がする。例えば、この記事を読むと、全体として「中国の躍進」「中国とアメリカ研究者の共同研究の増加」と比べて「日本の論文数や国際的な共同研究の伸び悩み」を述べている。

 こういった論調を見てどう思うだろうか。1月にブログで「今日の朝刊の1面から」の読売新聞の記事について似たようなことを書いた気もするが、今回の朝日新聞の記事も同様で、とにかく「国際的=アメリカ」とか「中国の躍進と日本の現状を比較」といったステレオタイプ的な見方にとらわれすぎているように見えるのは私だけだろうか。

 そこで今回は、もう少し冷静に科学技術分野の論文数について調べてみることにした。

 調べてみると、科学技術分野の研究に対する統計データは、日本では文部科学省科学技術政策研究所の科学技術基盤調査研究室というところでまとめられているらしい、ということがわかった。具体的には今回の新聞記事の話は「科学技術指標2012」の中にある。

 そこを読むと、論文数に関して

『日本の論文数(2009-2011年の平均)を見ると、「世界の論文の生産への関与度」では、日本は世界第5位であり、日本の被引用数の高いTop10%補正論文数(2009-2011年の平均)を見ると、「世界のインパクトの高い論文の生産への関与度」では、日本は世界第7位である。』

と書かれていた。

 新聞記事は、単純に全論文数のシェアしか書かれていなかったが、その他に「世界のインパクトの高い論文」の数も重要なようだ。また、世界各国の順位と論文数(2009-2011年の平均)に関する具体的データもあり、それを引用すると、上位8カ国は次のようになっていた。

全論文数
1位:アメリカ(308,745)
2位:中国(138,457)
3位:ドイツ(86,321)
4位:イギリス(84,978)
5位:日本(76,149)
6位:フランス(63,160)
7位:イタリア(52,100)
8位:カナダ(50,798)

世界のインパクトの高い論文数
1位:アメリカ(46,972)
2位:イギリス(13,540)
3位:ドイツ(12,942)
4位:中国(11,873)
5位:フランス(8,673)
6位:カナダ(7,060)
7位:日本(6,691)
8位:イタリア(6,524)

 これらのデータをもう少しわかりやすい形にするために、各国の「世界のインパクトの高い論文数÷全論文数」を計算し大きい順に並べ直してみた。

イギリス=0.153......
アメリカ=0.152......
ドイツ=0.149......
カナダ=0.138......
フランス=0.137......
イタリア=0.125......
日本=0.087......
中国=0.085......

 ここまで見れば一目瞭然だと思うが、欧米諸国は全体の論文数に対して1割以上が「世界のインパクトの高い論文」なのに対して、日本は中国より若干率が高いものの、その差はドングリの背比べと言われても仕方ない程度しかない。

 以上、論文数について調べてみたが、こうやって簡単に見ただけでも、日本は中国と競っている場合ではなく、すでに現在行われている質のいい日本の研究を「世界のインパクトの高い論文」の形にまとめる努力や、欧米諸国と同等の質の論文を増やす努力が必要、という気分になってくる。

 また、確かにアメリカは論文数では断トツだが、ヨーロッパ各国も同じ程度に研究論文を発表しており、別にアメリカだけが特別な訳ではないこともわかると思う。

 新聞も、様々な分野での中国の躍進が気になるのはわかるが、少なくともこういった研究に関する話は、もう少し冷静に考えた視点の記事にした方がいいと思うのは私だけだろうか。

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