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2013年4月

2013年4月30日 (火)

振り子時計の歴史

 何だかあっという間に4月が終わってしまった。このゴールデンウィークもゆっくり休むことができないのだが、それでも周りは休みモードなので何となくホッとする。

 ただ、やっぱり新聞等をゆっくり読む暇はなく、ブログのネタがなかなか思いつかないので、ちょっと時間が空いたときに、今日の日付4月30日の数字を取って430年前の出来事をインターネットのWikipediaで調べてみた。

 今から430年前というと、1583年。日本は戦国時代で、豊臣秀吉が柴田勝家を打ち破った年らしいが、正直なところ、これといってネタにしたい話題が見つからない。

 そうは言ってもWikipediaには様々な話題が書かれているので、もう少し粘って検索してみたところ、Wikipediaの「時計」の話の中に「1583年ガリレオ・ガリレイは、振り子の周期が振幅によらず一定であること(正確には振幅がごく小さい場合に限られる)を発見し、振り子時計を思いついた」と書かれているのを発見した。

 このガリレオが発見した性質は、このブログでも去年の夏頃に本を紹介した際に書いたことがある。ただ、振り子時計を思いついたのがガリレオだった、という事実は知らなかった。そこで、以前ブログでとり上げた話に関連しているし、ネタとして丁度よさそうなので、今回は振り子時計の歴史について少し調べてみることにした。

 はじめにWikipediaの「振り子時計」の項目の最初の文章を見ると「振り子時計とは、ガリレオ・ガリレイが発見した振り子の等時性(一定の周期で揺れる性質)を応用した時計である」と書かれている。「応用した」という表現は微妙で、ガリレオ自身が思いついたとまでは明記されていない感じがする。

 次に、英語Wikipediaの「Pendulum clock(振り子時計)」。まず項目の最初の文章をみたが、ガリレオの名前が出てこない。そこで、少し下がって「History(歴史)」の記述を読むことにした。

 すると、その中に次のような文章を見つけることができた。「Galileo had the idea for a pendulum clock in 1637, which was partly constructed by his sun in 1649, but neither lived to finish it.」

 直訳すると「ガリレオは1637年には振り子時計のアイディアを思いつき、1649年に彼の息子によって部分的に作られたが、結局ガリレオ本人・息子ともに生きている間に完成させられなかった」という感じだろうか。

 これは、ロンドンのScience Museum(科学博物館)のwebサイトの中からの引用で間違いはなさそうだから、「ガリレオが振り子時計を思いついた」というWikipediaの記述は正しいようだ。また、ガリレオ自身だけでなく彼の息子も振り子時計に関っていたこともついでにわかった。

 ちなみに、最初に振り子時計を実際に完成させたのはガリレオではなく「ホイヘンス」という人。「光の波動説」を唱えた有名な物理学者で「ホイヘンスの原理」でよく知られている。

 この「クリスティアーン・ホイヘンス」という人の項目を見ると「1656年12月25日-振り子時計を始めて実際に製作した」と書かれていた。さらに、ホイヘンスは1673年に「振り子時計」という書物を発刊しているそうだ。

 振り子時計の歴史が分かったところで、今回はここまでにしておこう。まあ、Wikipediaを調べただけだったが、英語のページには日本語のページにはない情報も多く勉強になった。また空いている時間にいろいろとWikipediaでネタを探してみよう。

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2013年4月26日 (金)

平成25年度の学力テスト

 おとといの、4月24日に、小学6年生と中学3年生を対象にした全国学力調査(学力テスト)が実施された。去年もブログでこの時期に「今年の全国学力調査」を取り上げたので、今年もどんな問題だったのか見てみることにした。

 問題や正答例・解説などは国立教育政策研究所の「全国学力・学習状況調査」のページにあるが、今年の問題をざっと眺めたところだと、小学6年・中学3年ともに新しい学習指導要領の影響を受けた出題になっているな、という印象を受ける。

 知らない方のために書いておくと、小学校では2年前の平成23年度から、中学は去年の平成24年度から、文部科学省が制定している学習指導要領が新しくなった。いわゆる「脱ゆとり」と言われているもので、文部科学省の「新学習指導要領・生きる力」のページには『これからの教育は、「ゆとり」でも、「詰め込み」でもありません』などと述べられている。

 実際には、ゆとりか脱ゆとりかに関係なく、教えなければならない項目が書かれているのが学習指導要領で、例えば、小学6年生の算数のところには「小数及び分数の計算の能力を定着させ,それらを用いる能力を伸ばす」とか「資料の平均や散らばりを調べ,統計的に考察したり表現したりすることができるようにする」といったことを指導してください、という感じで書かれている。

 今回の学力テストの話に戻そう。とりあえず小学6年の算数の問題を見ると、今回は割り算の計算をさせる問題がやたらと多いような気がする。また、統計や実験データから数値を読み取って状況を判断する、といった感じの問題も結構あったりする。

 例えば、算数Bの大問2では、振り子の実験の話がある。そこには「振り子が10往復する時間」を6回計測した結果の数値が書かれていて、まず「データの平均」を求めるために割り算を使い、さらに「1往復する時間の平均」を求めさせるためにもう一度割り算を使う、という問題になっている。

 私自身は、小学算数の現状は実のところあまりよくわからないのだが、おそらく割り算の計算は何とか出来るものの「どんなときに割り算を使えばいいか?」といったことが理解できていない人が多いから、こういった割り算を使う問題を増やしているのだろう。だから、今回の小学6年の算数の問題傾向だと、おそらく「割り算の利用方法をきちんと理解している」という人は良い成績を取れるに違いない。

 私自身、このブログでも度々割り算を使って話をすることがあるが、例えば最近だと「科学技術分野の論文数」の話で各国の研究論文数の傾向を調べるために割り算を使ったりしている。実際、割り算だけでも結構いろいろなことが考察できたりするし、こういった能力の向上を目指す方向性は悪くないと思う。

 ということで、今回は小学6年の算数の学力テストの問題を眺めた印象を書いてみた。今年の問題は、「女子サッカー・ワールドカップ」の話とか、中学3年数学には「ウォーキングの際の心拍数」の話とか、面白そうな話題が盛り込まれていて、正直なところ大人も楽しめそうな問題が多い。

 というか、算数や数学をやり直してみたい、と考えている大人の人は、是非今年の学力テストの算数・数学の問題を解いてみることをお勧めしたい。最後にそれぞれの問題へのリンクを書いて今回は終わりにしよう。

平成25年学力テスト・小6算数A(PDF)
平成25年学力テスト・小6算数B(PDF)
平成25年学力テスト・中3数学A(PDF)
平成25年学力テスト・中3数学B(PDF)

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2013年4月22日 (月)

将棋の電王戦が終わって

 以前ブログでも「将棋の電王戦に向けて」という文章を書いたが、その電王戦が4月20日に終わった。結果はコンピュータの3勝1敗1分け。チェスの世界チャンピョンがコンピューターに負けたのは1996年。それから17年後の今年、将棋の方もコンピュータがプロ棋士に勝てることが示されたことになる。

 まあ、人間が負けたからといって、今後もコンピュータと人間の将棋対決はなくならないと思う。ただ、今回と同じような形で対決するかどうかはわからない。

 例えば、今回最終戦でA級の三浦8段と戦った「GPS将棋」は、東京大学・駒場キャンパスにある約680台のコンピュータと接続して万全の体制でA級棋士に挑んだ、と報道されていた。

 一方の人間の方もコンピュータ将棋ソフトの研究は行っていたと思うが、他にもやることはたくさんあっただろうし、コンピュータ相手に万全の体制で挑んだかどうかというと、何とも言えないような気もする。

 それに、東京大学だって毎回毎回コンピュータ将棋のためにコンピュータを貸してくれるとも思えない。

 そういう意味では、今回プロ棋士が敗北したことで、ようやくコンピュータ将棋と人間の棋士との真剣勝負がスタートする、という印象を受ける。

 ところで、17年前のコンピュータチェスで、人間に初勝利したIBMの「ディープ・ブルー」は、その当時「1秒間に約2億手を読むことができる」と書かれていた。

 一方、今回の「GPS将棋」は、多数のコンピュータを駆使して「1秒間に約2億8千万手を読むことができる」と書かれているのを読んだ記憶がある。

 人間の超一流と対決するには、コンピュータといえども1秒間に約2億手以上読む必要がある、という感じだろうか。正直なところ、人間の世界チャンピョンや将棋のプロ棋士がこれほどの手を読んで指しているとは思えないので、やっぱり人間の脳の思考回路はすごいな、と再認識できるかもしれない。

 ただ、コンピュータチェスの方は、あれから17年たってプログラムもかなり進化したようで、今では人間の方がハンデをもらって戦っている状況らしい。将棋の方は今後どうなっていくのだろうか。

 別に、プロ棋士の方はコンピュータと戦うために将棋をしている訳ではないと思うが、将来コンピュータがどれだけ強くなろうとも、やはりハンデなしでコンピュータに勝てるレベルは維持したいと考えるに違いない。

 実際、コンピュータに人間が負けたからといっても、まだまだ人間にだって強くなる要素があるはずだし、コンピュータが人間を凌駕したなどと騒ぎ立てる前に、今後は「人間の能力向上のためにコンピュータを利用できる」というくらいの気持ちで見ていくべきたと思う。

 というか、チェスの方は、ディープ・ブルーを作ったIBMが宣伝に使ったことが影響したのかもしれないが、「コンピュータが人間を凌駕した」などと騒ぎ立てすぎたことで、人間の方が進歩することを諦めてしまったのではないか、とも考えられる。

 一方のGPS将棋は、それとは違い企業が作ったものではないので、そうはならないかもしれないが、いくらコンピュータの能力が上がったからといって、それで人間の進歩が止まってしまうのでは意味がないのではないか、と私自身は感じてしまう。

 こうやって書いているうちに「そもそも何のためにコンピュータの性能を上げるのか」ということも気になってきたが、考えだすとキリがなさそうだし、疲れているところでややこしいことを考えても良い結論が出ない気もするので、今回はこの辺りで終わりにして、また別の機会に考えてみる事にしたい。

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2013年4月18日 (木)

何も書く事がない?

 前回も書いた通り、最近忙しくブログのネタを探す時間がなかなかとれない。ここまで4日ごとの更新を続けてきたが、たまには「何も書く事がない」ということがあってもいいかな、などという気持ちもよぎってしまう。

 とは言いながらも、4日ごとの習慣になってしまったのか、何となくネタを探してみたくなる。そこで、とりあえず今日の日付「4月18日」とか「April 18」のキーワードで何か面白そうな話題はないかとインターネットで検索していたら、何も書くことが思いつかない今日の内容にピッタリの出来事が見つかった。

 それは、今から83年前(1930年)の今日(4月18日)起こった出来事。イギリスのBBCラジオのその日の夕方に放送されたニュース番組では、アナウンサーが次のように述べたそうだ。

「There is no news.」

 そして、その後はずっとピアノの音楽が流れていたらしい。簡単な英語なので訳すまでもないと思うが、要するに、その日の夕方の番組は「ニュースがない」ということが唯一のニュースだった、ということである。

 これは嘘でもジョークでもない。ニュース番組の歴史の一つとしてBBSの公式サイトの中にも書かれている実際にあった本当の話である。また、アメリカの雑誌フォーブスでは去年この話題を記事にしているようだ。その記事には、

「April 18, 1930 should give today's blog-fixated world pause.」

などとも書かれている。直訳すると「1930年4月18日の出来事は、現代のブログ漬けの世界に小休止を与えるべきだ」という感じだろうか。

 私も確かにその通りだと思う。ということで、今回は、「ニュースがない」ということがニュースになった記念すべき日に、「何も書く事がない」ということをネタにしてみた。

 まあ、今回はいつもより短めの文章だが、こうゆう日に無理に長い文章を書く必要もないだろうから、ここまでにしておこう。

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2013年4月14日 (日)

fMRIとEnernetの話題から

 今週に入って何だか急に忙しくなってしまったため、なかなかブログのネタを考える暇がなかったのだが、こういうときは、新聞や雑誌などをみながら気になることを探してみるのが何となくパターンになっている。

 ということで、今回はそんな感じで探した最近の記事の中から、これまでにブログでとり上げたことに関連している記事を2つほど紹介したい。

(1)
1週間ちょっと前の新聞になるが、「夢 解読できた 脳の活動パターンを分析」という記事があった。それによると、fMRI(機能的磁気共鳴画像)を使って、眠っている人の脳活動のパターンを計測し、夢を見ていると判断できた時にその人を起こしてどんな夢を見たかを報告させる事を200回以上繰り返したそうだ。実験の協力者とはいえ、200回以上も寝ているところを起こされた人はさぞかし大変だったと思う。

ところで、このfMRI、以前ブログで「数学を考えると頭痛?」や「脳が活性化する箇所」のときにとり上げた事がある。このときは、数学と頭痛の関係や将棋の上達について調べた研究だったが、それと同じパターンで、夢を見ているときに脳が活性化している箇所を調べ、見た夢の報告と照らし合わせたようだ。また、今回はさらに続きがあり、この分析をもとに、夢でどのような映像を見ているかをコンピュータで推定するプログラムを作った、という趣旨の事も書いてあった。

fMRIを使って様々なことが分析できるようになったのは悪くないのかもしれないが、寝ている間に夢をコンピュータで推定できる可能性がある、というのは何だか怖い気もする。こういった脳の働きを分析する研究は健全な方向で進歩していく事を願いたい。

(2)
話はがらっと変わって、今度は英文雑誌のTIMEの2013年4月8日号(APRIL 8, 2013)の中から。その12ページの記事の最初に「Smart Power」とか「clean tech」という言葉があってちょっと気になった。もう少し眺めてみると、どうも節電の話のようだ。最近はあまり書いていなかったが、以前は何度もブログで節電に関する話を何度も書いていたこともあって、きちんと読んでみたくなってきた。

この記事によると、アメリカでは、家庭や工場などの電気消費量をインターネット通じてリアルタイムに集め、それらをコンピュータのソフトウェアを使って分析することで電気を無駄なく効率的に使い電気消費量を抑えれば、(ソフトウェアを使って)安上がりにcleanな環境へ近づけていける、という考え方があるらしい。

言い換えると、究極の節電方法をコンピュータで見つける、ということである。これには、エネルギー(Energy)とインターネット(Internet)を繋げた「Enernet」なる造語もあるらしく、すでに「Enernet」のサービスを提供している会社もアメリカには存在しているそうだ。

以前ブログで紹介した「スマートグリッドの実験」は、電気の供給をインターネットを使って制御しながらcleanな環境に近づける、という感じだったが、今回は電気を消費する側をインターネットを使って制御する、という発想だ。当然だが、どちらがいいかということではなく、両方をうまく融合させていくことで相乗効果が現れれば、さらにcleanな環境に近づくのは間違いないだろう。

 ということで、今回は気になる記事を2つ紹介した。本当は、どちらとも、もう少し詳しく調べて、それぞれについてもっと書きたいと思っているのだが、忙しくてなかなか時間がとれないので、今回は忘れないうちに簡単に取り上げておくことにした。

今度同じような話題を見つけたら、またブログで扱ってみたいと思う。

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2013年4月10日 (水)

悪天候で予定変更

先週の1週間の天気は異常なくらい荒れた天気で、特に週末は台風並みに発達した爆弾低気圧が日本列島を通過し、強風・豪雨がひどかった。

 今年は、そんな時期にちょうどぶつかってツキがなかったが、実は先週の後半は、昨年と全く同様の行程で登山へ行くことになっていた。

 昨年の4月の初旬は、神奈川県の丹沢の東側にある塔の岳・丹沢山・蛭が岳へ行ってきたことを、このブログにも「神奈川県の最高地点」と題して紹介した。このときも、雪が降ったりして、天気が良かった訳ではなかったが、風はなく歩きやすい感じだった。

 しかし、今年の爆弾低気圧はそんな生易しいものではなかったようだ。実は、今年も予定通り標高1491mの塔の岳山頂まで登り、昨年と同様に山頂にある山荘で1泊した。しかし、朝起きたところ、山頂付近は一面霧で視界が全くないだけでなく、強風が吹き、とても登山を楽しむ雰囲気とは言いがたい状況だった。

 この塔の岳山頂は東側に高い山がなく、天気が良ければ、都会の(東京の方まで)夜景が本当にキレイに見えるはずなのだが、今回の夜は当然そんな風景を見ることもできず、強風の音を聞きながら不安な気持ちで過ごすことになってしまった。

 山荘の人も、低気圧が通過するときには、ふもとよりも山頂付近の方が早く天候が荒れてくると話していた通りになったのだが、実際に爆弾低気圧が通過するのはこの後で天候が回復する見込みもなかったため、今年は冒険はせずに予定を変更して、ここから先へは行かず下山することにしてしまった。

 ということで、今回は山へ行った写真を紹介したいと思っていたが、結局塔の岳山頂で夕方にほんの少しの時間だけ雲がなくなって富士山が見えたときに撮った写真と、歩いている途中に今年も遭遇した鹿の写真だけになってしまった。

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 まあ、鹿の方は、昨年は霧の向こうにうっすらと見えただけだったが、今年は本当に目に前に現れた上に、我々が近づいても全く逃げることもなかったため、至近距離から2枚撮ることができた。

 ということで、今年の4月は、最近の天気と同様なのか、少々スッキリしない感じのスタートになってしまった。ただ、新たな年度が始まったばかりだが、今年度はたとえ昨年と同様のことをするときにも、油断をせずに無理なく事にあたるべき、と教えてくれたのかもしれない。

 そう考えれば、今回はそんな中でも怪我もなく無事に下山できて良かったと思うべきなのかもしれない。

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2013年4月 6日 (土)

科学技術分野の論文数

 前回の「極地の氷の研究成果」では、日本の気象と北極の海氷との関係についての日本の研究成果を紹介したが、今回も研究に関する話になる。

 1週間ほど前になるが、朝日新聞に「研究論文数日本2→5位 研究国際化に遅れ」と題する記事が載っていた。それによると、日本は科学技術分野での論文数に伸び悩み、国際的な共同研究の流れに乗り遅れている、ということらしい。

 具体的には、全世界の科学技術分野の論文の中の日本のシェアは、10年前はアメリカに次ぐ第2位だったのに対し、現在はアメリカ、中国、ドイツ、イギリスに次いで第5位になった、ということである。

 これには、前にブログで「科学研究に対する考え方」に書いたような科学技術分野の研究そのものに対する考え方の違いもひょっとしたら影響しているかもしれない。ただ、数字の上で伸び悩みが顕著に現れているのは事実のようだ。

 しかしながら、こうやって他の国と比較しながら分析する場合、もう少し冷静にデータを見る必要がある気がする。例えば、この記事を読むと、全体として「中国の躍進」「中国とアメリカ研究者の共同研究の増加」と比べて「日本の論文数や国際的な共同研究の伸び悩み」を述べている。

 こういった論調を見てどう思うだろうか。1月にブログで「今日の朝刊の1面から」の読売新聞の記事について似たようなことを書いた気もするが、今回の朝日新聞の記事も同様で、とにかく「国際的=アメリカ」とか「中国の躍進と日本の現状を比較」といったステレオタイプ的な見方にとらわれすぎているように見えるのは私だけだろうか。

 そこで今回は、もう少し冷静に科学技術分野の論文数について調べてみることにした。

 調べてみると、科学技術分野の研究に対する統計データは、日本では文部科学省科学技術政策研究所の科学技術基盤調査研究室というところでまとめられているらしい、ということがわかった。具体的には今回の新聞記事の話は「科学技術指標2012」の中にある。

 そこを読むと、論文数に関して

『日本の論文数(2009-2011年の平均)を見ると、「世界の論文の生産への関与度」では、日本は世界第5位であり、日本の被引用数の高いTop10%補正論文数(2009-2011年の平均)を見ると、「世界のインパクトの高い論文の生産への関与度」では、日本は世界第7位である。』

と書かれていた。

 新聞記事は、単純に全論文数のシェアしか書かれていなかったが、その他に「世界のインパクトの高い論文」の数も重要なようだ。また、世界各国の順位と論文数(2009-2011年の平均)に関する具体的データもあり、それを引用すると、上位8カ国は次のようになっていた。

全論文数
1位:アメリカ(308,745)
2位:中国(138,457)
3位:ドイツ(86,321)
4位:イギリス(84,978)
5位:日本(76,149)
6位:フランス(63,160)
7位:イタリア(52,100)
8位:カナダ(50,798)

世界のインパクトの高い論文数
1位:アメリカ(46,972)
2位:イギリス(13,540)
3位:ドイツ(12,942)
4位:中国(11,873)
5位:フランス(8,673)
6位:カナダ(7,060)
7位:日本(6,691)
8位:イタリア(6,524)

 これらのデータをもう少しわかりやすい形にするために、各国の「世界のインパクトの高い論文数÷全論文数」を計算し大きい順に並べ直してみた。

イギリス=0.153......
アメリカ=0.152......
ドイツ=0.149......
カナダ=0.138......
フランス=0.137......
イタリア=0.125......
日本=0.087......
中国=0.085......

 ここまで見れば一目瞭然だと思うが、欧米諸国は全体の論文数に対して1割以上が「世界のインパクトの高い論文」なのに対して、日本は中国より若干率が高いものの、その差はドングリの背比べと言われても仕方ない程度しかない。

 以上、論文数について調べてみたが、こうやって簡単に見ただけでも、日本は中国と競っている場合ではなく、すでに現在行われている質のいい日本の研究を「世界のインパクトの高い論文」の形にまとめる努力や、欧米諸国と同等の質の論文を増やす努力が必要、という気分になってくる。

 また、確かにアメリカは論文数では断トツだが、ヨーロッパ各国も同じ程度に研究論文を発表しており、別にアメリカだけが特別な訳ではないこともわかると思う。

 新聞も、様々な分野での中国の躍進が気になるのはわかるが、少なくともこういった研究に関する話は、もう少し冷静に考えた視点の記事にした方がいいと思うのは私だけだろうか。

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2013年4月 2日 (火)

極地の氷の研究成果

 今年は桜の開花が非常に早かった割に、先週末から冬の寒さが逆戻り。一体、どうなっているのかと思っていたところ、新聞に「北極海の氷 小さいと 日本の冬 寒くなる」というタイトルの記事をみかけた。

 極地の氷の話は、以前このブログでも「極地の海氷」の中で、北極南極の両方について「正反対の振舞? 北極海は氷が縮み、南極では膨らむ」ということを書いたが、今回はそのうちの北極の氷が縮むことと日本の気象との関係についての話らしい。

 内容は国立極地研究所や海洋研究開発機構の研究成果の話で、それによると、北極海のノルウェー北部バレンツ海の氷の面積次第でシベリアへの低気圧の通り道が変わってくる、ということがわかったそうだ。

 そして、この地域の海氷が少ないと、低気圧がシベリアを避ける分、日本への寒気の原因となるシベリア高気圧が拡大し、結果として強い寒気が日本へ押し寄せる、ということのようである。

 実は、昨年12月のバレンツ海の海氷は過去30年余りで最小だったそうで、今年の日本の冬の気象は、この研究成果を裏付ける結果となっている。今年も海水温が高めなため、次も海氷が小さくなり日本の冬も寒くなる可能性があると指摘している。

 海水温というと、南米ペルー沖の水温が高いときのエルニーニョ現象、低い時のラニーニャ現象が一般にも知られているが、今後はノルウェー北部のバレンツ海の水温や海氷の大きさも冬の気象予報の指標に使えそうで、記事では「長期予報にも生かしてもらえれば」と結んでいる。

 ところで、このような北極や南極の海氷の変化やその影響に関する研究は世界中で行われていて、最近その成果がいろいろ出ているようだ。観測技術が向上していることが研究成果が出ている要因の一つであることは間違いないと思うが、観測だけでこれだけ詳細なことがわかる訳ではなさそうだ。

 では、どうやって研究成果を出しているのか。そう思ってインターネットで検索して調べみると、実は数学的な記述による「海氷モデル」と呼ばれるものが存在することがわかった。

 日本の研究の中では、例えば「気象研究所技術報告第47号 気象研究所共用海洋モデル(MRI.COM)解説」に、地球上の大気循環や海洋循環を記述する方程式、海水温の予報のための方程式などが載っているが、その「第10章 海氷」に「海氷モデル」の話を見つけた。

 中身を見ると、大学レベルの数学と物理学をきちんと理解していないと読めそうもないのだが、そういった数学的な手法が、観測すること自体が難しい極地の氷の研究成果に大きな役割を果たしているようである。

 さらに調べて具体的なことについて知りたい気もするが、今回はそこまで調べる余裕がなかったので、一応ここまでとしたい。少々中途半端なところで終わってしまうが、先週末から冬の寒さが戻ってきたタイミングで北極の氷に関する新聞記事があったので、それと合わせてインターネット検索で得られた情報も書いてみた。

 実のところ、このあたりのことを調べるきっかけは、前にブログでとり上げた南極の氷の話なのだが、また同じような話が新聞に出てくるかもしれないので、もう少し続けて調べてみたいと思う。

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